老猿 安彦

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<<   作成日時 : 2011/01/19 20:22   >>

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 見てくださる人なんて誰もいないかも…、と思いつつ始めたブログですが、既に何人かの方にお越しいただいたようで本当にうれしいです。心より感謝しています。
 ご挨拶が後手になり申し訳ありません。姉と二人でこのブログの運営をしています。楽しんでいただけるブログになるよう精一杯努めますので、お暇な時にでも遊びにいらしてくださいね。
 父親の小説をブログを作ってまで発表している私達は、さぞや仲のいい親子だったんだなと思われる方もいらっしゃると思いますが、違います。父は小説を書くこと、生まれ故郷の福井県、幼馴染でもある妻(私達の母)、夭折した父親と自分を捨てた母親にしか興味がなく、子供に対する関心度は、時折「あいつらは失敗作」と言うのがせいぜいでした。
 自分の年齢と同じだけ父とは付き合いがあるはずなのに、私にとって宅急便のおじさんよりも遠い存在でした。たまに実家に顔を出しても父は天岩戸よろしく自分の部屋にこもり出てくることなどめったになく、皮肉にも顔を合わせるようになったのは、父が認知症になってからでした。母と私がくだらない話などをしていると父は話に加わるわけでもなく傍に座っていて、帰ろうとすると「また来て」などと言い、私を驚愕させました。その時に感じた情けないような苦しいような、それでいてどこか愛しいような気持ちは古傷のように私の中に残っています。
 「影絵」、次に載せる予定の「けものみち」は7割くらい実話で、父の自叙伝的小説になります。ブログで公開する「けものみち」は『自由都市文学賞』に応募した同名の小説「けものみち」の下書きになったものです。応募枚数に合わせず好きなように書いた短いこちらの方を父は気に入っていました。
 書いている時には既に認知症の兆しがありました。主催者の方から「また来年も必ず応募してください」と、とても丁寧な落選のお電話をいただいたのですが、頷く父に表情はありませんでした。認知症であることを否定し続けていましたが、自分に来年はないと感じとっていたのだと思います。 
 「けものみち」は前述のとおり認知症の初期に書いたものです。「あれ」「それ」「えー」だけで日常会話をすませていた人のどこにあれだけの語彙が詰まっていたのか、どうやってパソコンで原稿を打ったのか(父がいかにパソコンができず打つのが遅いかは教えた私が一番知っています)、規模は恐ろしく小さいですが、私に言わせると奇跡なのです。
 「けものみち」が作品としていいか悪いかということより、「父はこれを書く為に生まれてきたんだ」という確信が(思い込みとも言いますが…)あります。人生のお役目にしては、あまりに短い小説ですが、一人でも多くの方に読んでいただけたら幸せです。
 
先日、芥川賞の発表があり、朝吹真理子さん、西村賢太さんが受賞されていました。西村さんのコメントには思わず仰け反りましたが、受賞作を思わず読んでみたくなるようなお人柄でした。十年に一人レベルの記憶に残る作家になられるような気がします。

 

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